予期せぬ妊娠に悩む女性への支援や新生児の命を守る目的として、ドイツの「ベビークラッペ」を参考に、匿名で子どもを預けられる施設として、慈恵病院が計画。国内法体系に前例がないため、国や熊本県との協議を丁寧に重ね、平成19年5月10日からの運用開始。しかしそれは、慈恵病院が計画を発表してから半年という速さでもあった。
赤ちゃんの預け入れ後については、警察は、保護責任者遺棄等の危険性を確認。児童相談所は要保護児童として一時保護。保護者が判明すれば管轄の児童相談所へ移管、不明の場合は社会的養護(施設・里親・養子縁組等)。
令和5年3月末で特別養子縁組は87件(全体の約5割)。預け入れ件数は令和6年度までの18年間で合計193件。預け入れ時の年齢は新生児が8割超。出産場所は自宅や車中など専門職の立ち会いがない「孤立出産」が半数超。預け入れに来たのは母親が5割以上、夫婦や親類・知人が同行する場合も。預け入れ理由は生活困難が2割超、複数の困難を抱えるケースが多い。預け入れは全国からあり、熊本県外が9割。
熊本市では平成29年から「妊娠SOS熊本」などを実施し、24時間相談体制を整備。令和5年4月には「妊娠内密相談センター」を設置。匿名での相談も可能。
見えてきた課題としては、匿名性は、母子の緊急避難として機能し命を守る役割を果たしているが、適切な支援につながらないことや、子どもの出自を知る権利を損なう可能性があるということがあげられていた。
私は、全国から預け入れに来る現実があるにも関わらず、財政的負担は、慈恵病院が負っていること。熊本市はゆりかごへの予算措置はないが、預け入れ後の子どもたちの支援はしている。国レベルでの制度・財政支援の具体化が急務であること。
また、社会的養護下の子どもが社会に出た後の生活状況や支援実態についての追跡・把握はできてはいないとのことなので、子どもの自立支援や継続的なフォローアップ体制の構築が求められると考える。
(視察1日目8/6② 熊本市「こうのとりのゆりかご」との関わり)